今回は、ATPツアー屈指の名試合であった、2011年全仏オープン準決勝のフェデラーvsジョコビッチの試合を振り返ってみましょう。グランドスラムでのBIG4同志の試合は数多く行われてきましたが、この試合はその中でも特別なものだったと思います。その理由も含めて紹介します。
試合結果
結果は、7-6、6-3、3-6、7-6でフェデラーが勝利しました。
タイブレークが2セットありましたが、どちらもフェデラーがとったことが大きな勝因でしょう。
名試合に選ばれる理由
2011年はジョコビッチが覚醒
2011年はジョコビッチが覚醒した年になりました。長年、フェデラー・ナダルに次ぐ第3位の位置にいましたが、上二人をなかなか倒すことができずに「第3の男」と呼ばれ続けたジョコビッチ。ですが、2010年のオフにグルテンアレルギーであることが発覚し、すぐにドクターをチームに加えてグルテンフリーの食生活を取り入れると、リミッターが外れたジョコビッチが覚醒します。
2011年初めの全豪オープンで3年ぶりの優勝を果たすと、その後も連勝を続け、マスターズ1000の4大会を含め出場した大会すべてで優勝を果たします。クレーコート開催のマドリード、ローマでもナダルを寄せ付けない試合を見せ、年初から43連勝無敗でこの試合を迎えることになります。
No.1への最後の壁となったのは元No.1
連勝を続けていたジョコビッチですが、ランキングはまだ2位に位置していました。ナダルが2010年後半の大半の大会で優勝していたためです。しかし、この準決勝に勝つと、決勝でのナダルとの対戦を待たずして初の世界ランキング1位に上り詰めることが確定します。ジョコビッチにとっても非常に重要な1戦となりました。
しかし、初の世界ランキング1位達成の前に最後に立ちはだかったのは、元世界No.1にして誰よりも1位を知る男、フェデラーでした。全盛期の勢いは失われつつあったフェデラーですが、この試合に賭ける意気込みは傍から見ても明らかに違ったように思います。「そう簡単には1位になれない」と。
試合展開
第1セット
試合は、ジョコビッチ優勢から始まりました。第6ゲームでブレークを奪い4-2とリードします。しかし直後のサービスゲームではフェデラーの攻撃的なフォアがさく裂し、あっさりとブレークバックを許してしまいます。
この日のフェデラーはクレーコートにも関わらず全盛期に近い攻撃的なフォアハンドでエースを量産し、ジョコビッチはたまらずバックにひたすら集めざるを得ない状況になります。
その後はお互いサービスキープを続け、タイブレークに突入。タイブレークも拮抗した展開が続きますが、最後の最後でジョコビッチにミスが出てタイブレーク7-5でフェデラーが第1セットを先取します。
第2セット
第1セットを先取され勢いを失ったジョコビッチは第2セットでも流れを大きく変えることができずに、終始フェデラーのペースで試合が進みます。第4ゲームのジョコビッチサーブで凡ミスからブレークを許しフェデラーがリードすると、その後もサービスゲームをキープし続けそのまま6-3で第2セットもフェデラーが取ります。
無敗のジョコビッチが2セットを連取され追い込まれる状況に観客たちもどよめきはじめます。
第3セット
ここまで全く試合の流れをつかめなかったジョコビッチですが、ラリーの中で強打を増やすことでようやくペースをつかめるようになります。ショットも少しづつ深いところで安定しはじめ、ラリーでの主導権を少しずつ握れるようになります。
第2ゲームのフェデラーサーブでセット早々にブレークに成功し、流れを掴むとそのままサービスゲームをキープし続け、第3セットは6-3でジョコビッチが取り返します。
第4セット
第2、3セットとも序盤のブレークが致命傷になったからなのか、第4セットは緊迫したサービスキープが続きます。お互いに譲り合わず4-4となります。ここでフェデラーサーブに対して、ジョコビッチが果敢に攻め、長いラリー戦を制してブレークに成功。均衡が崩れ、ジョコビッチのサービス・フォー・ザ・セットを迎えます。
しかし、この場面で一歩も引かなかった元王者はギアを一段上げ、強烈なフォアでのエースを乱発してブレークバックに成功。再びイーブンの状態に戻りそのままターブレークに突入します。
タイブレークで主導権を握ったのはフェデラーでした。ドロップなど多彩なショットを混ぜ、ポイント6-3とリード。マッチポイントを迎えます。しかし、ここからジョコビッチがサービスポイントをキープし6-5。ラストのマッチポイントを迎えたフェデラーはこの日最も決まっていたセンターへ再度サービスエースを放ち、ワンチャンスを活かして勝利します。
勝利後にフェデラーは少し間を置いてから雄叫びをあげます。この試合に勝利することがどれだけ大きいかを物語るシーンでした。
試合後
この敗戦により連勝記録がストップしたジョコビッチは、決勝でナダルが勝利したことで初の世界ランキング1位浮上もお預けとなります。しかし、3週間後に行われたウィンブルドンでは決勝でナダルを倒し、初優勝を飾ると同時に文句なく世界ランキング1位に上り詰めます。
その後の全米も制覇したジョコビッチはGS年間3勝と圧倒的な戦績を残し、初の年間1位を獲得。「第3の男」というレッテルを完全に払拭します。
ここからマレーも浮上し、いよいよBIG4の時代へと突入していくのです。詳しくは以下の記事をご確認ください。
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まとめ
この試合は上記のような背景もあり、今振り返ってみても時代を彩る名試合だったと思います。フェデラーの王者としての意地が垣間見える貴重な試合とも言えるでしょう。
この試合をもっと見たいという方は、以下に関連リンクを載せておきますので、ぜひ御覧ください。